治療の手順
1. 聴き取り(カルテ取り)
治療に入る前に、患者さんの調書を取ります。一定のフォームにしたがって、治療の参考とすべき事柄を順次、聴き取りしていくわけですが、患者さんの偽りのない応答が要求されます。時には、症状から離れて家庭環境や労働環境、既往症にまでお聞かせいただき、治療の参考データにされます。こうしたカウンセリングを通して、カイロプラクターと一緒に治すという意識を確認してもらいます。
2. 第一段階検査❶ 中枢神経(脳・脊髄)からくる疾患を調べる神経学テスト
さほど気にもしていないような軽度の症状にも、重篤な疾患が隠されていることがあります。そこで、治療の適応か否かを判断するために、神経学の検査が行われます。写真は、アキレス腱反射(深部反射)を検査しているところですが、病的反射や表在反射、歩行やバランス感覚をみる小脳機能検査など、日常行われる50種類ほどの検査が必要に応じて使い分けられています。もしも、中枢神経の障害が疑われたら、即座に専門医の精密な検査を勧めることになります。
3. 第一段階検査❷ 末梢神経(手や足に走る神経および脳神経)からくる疾患を調べる神経学テスト
腱反射の低下の有無や左右差を調べることことにより、末梢神経根障害レベルも異常を特定することができます。あわせて知覚異常の検査や筋力テストも用いられます。写真は、瞳孔に関する反射調べているところですが、光を入れた瞳孔の収縮状態で、脳神経の異常やストレスの程度を予測することも可能と言われています。こうして簡易な神経の検査を行い、治療の適応性が確認されたら、さらに部位を限局する検査へと進みます。
4. 第二段階検査❶ 整形学テスト
整形学テスト(オーソペデイック・テスト)は、障害部位のメカニズムを解明したり、痛みを再現させて部位を特定したり、治療前後の比較としても価値ある検査です。多くの検査手技がありますが、写真は腰痛患者の下肢を持ち上げていき、どの関節が動いた時あるいは負荷が加わった時に痛みが再現されるかを調べるテストをしています。これらは患者さんに多少の苦痛を強いる検査ですが、すべて手で行われる安全なものです。
5. 第二段階検査❷ 筋力テスト
筋力テストは、単に筋肉のパワーを調べる方法と異なり、筋肉の生理的な緊張度をチェックします。約60種類の筋肉が、必要に応じてテストされています。筋肉が過剰に緊張しているか、逆に低下しているかによって、その対応する神経レベルや内臓機能との関連が特定され、機能障害の有無が検討されるのです。
6. 第三段階検査 動態触診(モーションパル・ペーション)
障害が想定される脊椎レベルあるいは四肢関節レベルに対して、今度は組織を動かして調べる検査が行われます。それが動態触診です。これにも多くの手技がありますが、写真は胸椎レベルでの動きの固着や異常運動性を調べているところです。この検査によって、治療すべき刺激入力の方向が決められなす。治療後は的確な刺激により、可動性が改善したか再度の動態触診で確認することになります。
7. 治療
当院では、基本的に「姿勢・運動制御系」を重視して治療を進めています。
身体の空間認知能力を、垂直軸(回転)、前後軸(側屈)、水平軸(前-後屈曲)の3D分析と検査によって、異常な身体の姿勢運動機能をつくっている固着した軸を解放します。目的は、①神経学的にプログラムされた身体機能の再構築(リプログラミング)、②関節・筋・筋膜システムの再調整(リアライメント)、③人の本来あるべき機能(ホメオスタシス)をダイナミックな恒常状態(ホメオダイナミクス)に向けることにあります。
そのために、「脳-身体-心」を三位一体としてみる治療観に 従い、精神心理の安定と自律神経系の調整も考慮に入れて、 からだにやさしいソフトな手技により治療を行います。また、自己免疫機能の回復など多彩な治療 のメソッドに学びながら、患者さんの病態に合わせて採用し、その応用によって可能な限り早い回復を期したい、と考えて治療に取り組んでおります。
8. 説明
治療が終わると、検査データに基づいて病態を解説します。どのような治療を行ったのか、その目的などを具体的に説明することになります。姿勢や生活習慣に関連したアドバイスをしたり、必要に応じて在宅エクササイズや運動法、栄養学的な指導も行います。そして、患者さんの愁訴を一緒に治すにはどうしたらよいか、治療計画と注意事項を話し合います。この機会は、患者さんが自身の身体状況を知ること、そして健康に対する意識づけとしても活用できることでしょう。