膝痛-膝痛から運動交叉のアンバランスを探る
60代の老婦人が左ひざの痛みを訴えて来院した。最近の春の気配に誘われて何かと忙しくなる時期でもある。急に動きはじめたのだろうか?そう思いながら尋ねると、そろそろとは思っているがまだ寒いから、とのこと。腰も肩も痛むから、冬の間あまり動かないで来たからじゃないのかな?と話した。運動分析をすると、屈曲より特に伸展する動作で左ひざの内側が痛むという。全ての動きで同じ部位に痛みが起こるようだ。経絡ラインでは脾経である。関節可動域はたいした問題は感じられない。
最初に全体調整を試みることにした。
治療の優先は「神経バランス」とでる。
検査結果にしたがって、治療は以下のように進めた
①ベーガル神経(背側核・疑核)へのアジャスト ②滑車神経(左下斜筋を指標にリセット) ③副神経(左);左上僧帽筋と左胸鎖乳突筋の低下を指標にしてリセット④Subluxation;L3、C4のアジャスト ⑤運動膜連鎖のパターン(左腎~小腸のライン);クロスパターン&頸椎伸展位の抑制バランスの指標をリセット
ここで膝痛の確認した。屈曲では問題なかったが伸展位で内側(脾経)ラインが痛む。⑥そこで、巨刺法の応用を試みる。陰陽交叉なので右上肢の大腸経にリセットポイントを選ぶことにした。
このように運動パターンで発痛部位が限局されるケースには、経験的に巨刺法の応用がとても効果的と思っている。タッチトークで取穴(と言っても鍼灸師ではないのでアバウトな取穴ではあるが)を決める。1)L15(陽谿);刺激した状態で左伸展運動をさせるとVAS10→5、2)L16(偏歴);さらに膝伸展運動でVAS10→4、3)ST25(天枢):さらに膝運動でVAS10→0
推論;おそらく冬場の間コタツにでも入りながら手作業(右手の反応なので右手ばかり動かしてきたのかな? どうもパッチワークを続けたらしい)状態の一側の動きに対して下半身は固定的にアンバランスが作られたのだろう。
患者さんは「とても楽になった。よかった!」と言ってくれたが、「治ったのではないよ。右手だけでなく、脚も全体的に動かすようにしなさい」と生活上の指導・管理を付け加えた。