だから、骨じゃないんだって!
頚部症状とX線所見との関連についてはいまだ議論が続いているが、弘前大学整形外科の熊谷玄太郎氏らは地域住民762例を対象とした調査において、その関連を評価した。その結果、男女とも頚椎の矢状面アライメントは頚部症状と関連していないことが示されたが、女性においては頚椎の変性変化と頚部痛強度との関連が有意であったことを報告した。(Journal of Orthopaedic Science誌オンライン版2014年2月26日の掲載報告)
弘前大学整形外科の調査から、Care Netの「肩こりは頸椎X線で“みえる”のか」の記事。
その結果は、X線写真にみる頸椎矢状面アライメントと頸部症状は関連していない、ということ。
だから、問題は骨ではないんだ!
そんなことは既に明らかなのに、いまだに臨床の現場ではその単純な因果論が俎上に上がる。
医学は解剖学の発達と並走するように進歩してきた学問だから、解剖学的に診ようとする習性がつきまとっているのだろう。
この調査も、「女性においては頚椎の変性変化と頚部痛強度との関連が有意であった」と結んでいる。
どうしても、その因果論が気になるようだ。
医学は、あくまでもヒトを身体という閉鎖されたシステムの中で捉えて診ようとする。
ところが実際のヒトは、人間関係や社会的あるいは環境的要因と共存する開いた系である。
だからヒトを閉鎖系の中に捉えている限り、ヒトの持つすべての症状を証明することなどできないのだろう。
こんなことを言うと、「骨の変性変化と症状の関連はゼロではないだろう!」、と小児病的に「全か、無か」を盾にしようとするかもしれない。
でも問題とすべきは、「脊椎の変性変化と疼痛強度との相関」がセントラル・ドグマになっていることなんだ。
だから、そうした関連性が「ゼロか、ゼロでないか」なんて、大した問題ではない。